murasehisariの写真屋さん日記

学校アルバムの仕事をメインに街の写真屋さんでお仕事してるmurasehisariの日々是徒然日記です

遠視鏡と老眼鏡の違いについて

ツイッターで相互フォローしてる方から質問のDMをいただきました。先日、私は勝間和代さんの遠視鏡と老眼鏡の記述について「違うものは違う」と書かせていただきましたが、ツイッターのほうでも記事の内容はメガネ屋にとってとってもありがたいんだけどメガネに対する認識の間違いをそのまま広められては困る、と書いてたんですね。そこで違うといっていたのがこの「遠視鏡と老眼鏡」のことで、いったいどこが違うのか、と疑問にもたれているとのことです。
ものを見るための目の成り立ちが違う、とか、そもそも遠視と老眼の違いである、というのは元々それが何であるか知っているから言えることであって、目の成り立ちの「そもそも」から理解していただかないとこれはわかんないことなのではないか、とこのところ「#meganejosi」のタグでいろんな人のコメントに触れて自分がいかに頭でっかちなんだかとわかってきたところなので、どうやって説明しようか、と考えました。そこで以前にも書いたことのある内容を繰り返すことにもなりますが、まず屈折異常とはどういうことかからお話しようと思います。
屈折異常とは、本来目の一番奥にある網膜上に結ばれる焦点が手前もしくは後ろで焦点を結ぶことをさします。「異常」とかかれるので何かしらの病気ではないかと思われがちですが、これは人それぞれ身長や体重が違うように、また顔立ちが違うように、持って生まれたときからの形でありまたその成長過程においてどのように変化していくかによるので、異常と言うのが病気を指すというものではありません。
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一番上の「正視」というのは、無調節状態で網膜上に焦点が当たっている状態の目のことです。このような目の持ち主の方は、遠くを見るのにメガネやコンタクトレンズの力を借りなくても不自由しません。
真ん中は遠視の状態です。眼前から入ってくる光(目に見えるものはすべて光となって目の中を通りますので、見ているものすべてと言うことになります)が網膜の後ろで焦点を結んでいるものです。この場合は比較しやすくするために眼軸の長さが短い(眼球の大きさが小さい)ために遠視になっている状態を図にしましたが、条件的には眼軸ばかりでなく元々持っている水晶体の厚みが網膜上にあたるよりも後ろに行ってしまうぶんしか持っていない場合(プラス方向の度数が足りない)でも同じように遠視になりますし、角膜の曲率がフラットすぎてもなる可能性があります。
最後は近視ですが、これは眼軸が長い、水晶体の屈折力が強い(プラス方向の度数が多い)角膜の曲率が強すぎるなどの場合でなる状態だといえます。網膜よりも手前で焦点が結ばれてしまうので網膜上に像は届かず、遠くはぼやけてしまいます。
では老眼とはどういったものなのか、ですが、老眼はどんな目の状態の方でも年齢相応に持っている調節力が年とともに減退していくことで起こる状態のことです。どんな近視の方でも遠視の方でも、だいたい30〜40代くらいまでは調節力はかなり近くに焦点を持ってこれるくらい持っているんですが、50代近くになるとぐんと低下してしまうのです。
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これは、どんな目の持ち主の方でも、ある意味平等に起こります。但し食生活やストレスの掛かり具合なので変化が緩やかだったり急激だったりすると思います。調べてみると年齢よりも調節力が旺盛だったりする方にどんな食生活を、とお聞きすると野菜が中心だったりアルコールは飲まなかったり、煙草はすわないと言う方が実際のお客様でいらっしゃいますので、結局この老眼と言うのは自分の身体の「老化」と密接に関わりがあるのだ、と思います。老化の要因に上げられる酸化や紫外線は、ものの見え方にかなり影響します。
さて、ここまでが遠視と老眼の違いの説明です。遠視というのは若い方、小学生でも遠視のお子さんはいらっしゃるし「子供の遠視」を特出して書かせていただきましたが生まれてからしばらくは、ほぼどんな人でも遠視の状態でいて成長過程の中で眼球の大きさが成長して近視や遠視や正視になっていくのです。
この遠視の方が遠くを見るために使うメガネのことを「遠視鏡」と呼ぶのか、それとも遠方視のためのメガネを「遠視鏡」と呼ぶのかで言葉としての説明は違ってきますが、いずれにしても「老眼鏡」とは視力を補正すると言う目的の意味での成り立ちが違います。
では次に具体的にメガネそのもののどこが違うのか、ですが、メガネを必要とする方一人ひとりの必要度数が違うので度数を上げてこの度数は遠視の度数でこの度数は老眼の度数と言う分け方は出来ません。遠視の度数が+1.00D必要な人が、市販の出来合い老眼鏡の+1.00Dをかけても見えることは見えるんです。メガネレンズの度数が同じであれば、目の中を通るための屈折を必要なだけ曲げて通してあげることが出来るからです。しかし果たしてこれを同じメガネだと言っていいのかどうか、ということなんだと思います。質問を下さった方が疑問に思ってらっしゃるのは、こっちのほうなのかもしれません。レンズが同じなら、遠視のメガネだって老眼のメガネだって同じものじゃないか、と思うのだろうと思います。しかし厳密に言うと違う作り方をします。
遠視を補正するための遠方視用メガネまたは遠方視用メガネを「遠視鏡」とする場合、一般的にこれを作る場合にはお客様の目と目の間隔(PD)のそのままの数値を均等割して左右のレンズの加工時にセットします。60ミリなら右30ミリ左30ミリという感じです。かなり精密に作る場合(眼科で処方されたりプリズムがあったり左右の乱視がかなり違ったり度数の差が大きかったり理由はさまざまですが)このPDは均等でないこともあります。
レンズの光学中心はフレームのセンター(上下の真ん中、左右はPDにより異なるため)より+2.0UPで作るのが一般的です。コンプリート加工(メーカーのラボでの加工フレームの場合)ではアイポイント(EP)2.0UPとメーカーに加工指示出したりします。これは通常遠方視をするときは人の目は水平状態よりも若干上のほうを見る状態になっているので、真ん中よりも2ミリ上に光学中心を持ってくるようにしています。
老眼鏡は、PDが遠方視の状態より全体で2または4ミリ内側に寄せて加工します。EPも水平状態を保って加工します。なのでEPは+−0.00ということです。これは近くを見るときは目は必ず内寄せになるので、それにあわせるためです。同じ人のメガネでも、遠方視用と老眼鏡ではPDのセッティングに違いが出てきます。
メガネを掛けたことのない方には意外に思うかもしれませんが、このPDというのはメガネを作る中では度数の次くらいに重要な要素になります。度数があっていてもPDが全然あっていなかったら出来上がったメガネをかけてもなんとなく焦点が合わない状態になって、ひどく疲れるものになってしまいます。EPも同じで、これがあっていないと焦点が合わないと感じる方もいらっしゃいます。許容範囲は+−2ミリといわれていますが、その方のPDできちんと作ることが大切だと考えています。
メガネ自身の違いはそんなところじゃないでしょうか。またメガネ屋さんによってもどうやって作っているのかの定義が違うと思うので微妙にウチの作り方とは違いが出るかと思いますが、極端に違いは出ないと思います。
最後に参考までに、参天製薬さんからとてもわかりやすいPDFが出ていたのでご紹介します。プリントアウトも出来るみたいなのでありがたいです(あとでしよー!)
参天製薬「遠視と老眼」 http://www.santen.co.jp/health/pdf/enshi.pdf#search='遠視 老眼'
前々から、遠視というのは理解していただくのが難しいと思ってきましたが、実は自分が遠視なのかどうかは簡単にわかるんです。眼科やメガネ屋にあるレッドグリーンテストをすると、大筋の状況がわかります。これで緑がはっきりすれば、もしかしたら遠視かも?ということです。ぼやけてたら近視または乱視が強いのかってことなので、赤と緑がだいたい同じに見えない状況であれば何らかの屈折異常だということです。でもこれでは老眼であるかどうかはわかりませんよ、老眼であるかどうかは近点視力表を使った検査をしないとわかりません。視力の測定方法も違うのです。
以下に今までの記事で参考になりそうなのをあげておきます。他にもあるような気がするんだけど・・・・・自分の書いたものですが把握できてませんね、スイマセン。
http://d.hatena.ne.jp/k-hisari/20091123/1258965039
http://d.hatena.ne.jp/k-hisari/20081014/1223960730
http://d.hatena.ne.jp/k-hisari/20090223/1235394322