murasehisariの写真屋さん日記

学校アルバムの仕事をメインに街の写真屋さんでお仕事してるmurasehisariの日々是徒然日記です

真夏のセルフレーム

黒のセル枠のメガネをかけているお客様が、「フレームからレンズがはみ出てる」といって直せるかどうかとお持込になった。
見ると上のリム部分からレンズが仰るとおり飛び出ていて、両側の押さえているからかろうじて外れていない、と言う状況だった。詳しくお聞きすると、ここ数日間のうちに気がつくようになってそれまではこんな風じゃなかった、というので一応「直射日光の当たるような場所や、車の中に置きっぱなしではなかったですか」とお聞きしてみた。特にそういったことは覚えがないけれど、ここ数日の暑い間は海水浴に行ったり野外イベントに参加したり、外にいるほうが多かったと言うお返事で、一概にそれが原因とまでは言えないけれど通常よりもフレーム自体熱を帯びる可能性の高い状況だったことは確かなようだった。
セル枠は、熱を加えるとどうしても変形します。レンズを枠入れするときにも、温風器で熱を加えある程度フレーム全体が柔らかくなってから押し込むような形でレンズをはめ込みます。金属枠はネジで止めつけるのでフレームとレンズのサイズ確認は何度か繰り返し出来るんだけれど、セル枠の場合はそれが出来ないのでレンズの削りだしの時に一度で大きさを決定してしまって、後はこの熱を加えたときの加減で収まり具合が決まります。
ですが、枠に入れてしまってからだって強い熱が加わったり、上記のように直射日光の当たる状況に置かれるとフレーム全体が柔らかくなってしまうし、そうしてレンズのカーブと微妙にあってなかったりすると、はめ込み具合で飛び出してしまったりすることはありえる。今回の枠を見させていただいたら極端に横に幅のある四角いデザインで、フレームカーブはかなりフラット、どちらかと言うとこれは申し訳ないがデザイン重視であってレンズは限られたものしかはいらなそうな枠だった。
入っていたレンズは球面レンズで、乱視は入っていないもののレンズカーブのかなりあるものだった。フラットなフレームにカーブのきついレンズを例えばレンズの加工時にヤゲン立てをレンズ前ならえで削ってしまったら、レンズカーブの方が急すぎて前に飛び出る、といったことが想像できるが、今回はまさにそんな感じだった。
直し方はまず一旦レンズを枠からはずさなくてはいけなくて、その上で枠の方に熱を加えてカーブをつけていく。そうしてレンズカーブとあわせたところではめ込みとなるわけだけれど、元のデザインがフラットであるからどうしても時間が経つと元に戻ろうとするし、再び熱が加わるとそれもまた元に戻る原因になるえる。
うーん、これはレンズの選び方なんだと思うんですよ。フラットな枠だったらフラットなレンズ、非球面レンズを選ぶのが一番しっくり行くだろうし、それが出来なかったら加工時にマニュアル加工でレンズのヤゲンカーブを極端にフラットにしてしまうか、どちらかだと思うんですよね。でもなぁ・・・レンズカーブが結構あると、ヤゲンたてだけでフラットにすると言うのも限度があるしなぁ(汗)
最近はとにかくデザイン重視のセル枠が多いので(いや、金属枠もデザイン重視になってきてて加工が大変なのがかなりありますが)、そこを見極めたレンズ選びも必要になってきますよね。お洒落な枠で厚みのガッツリ出るレンズを使っても見栄えが良くないしなぁ・・・度数さえ合っていれば見え方は問題ないんだけどね。
いずれにしろ、夏場のメガネの取り扱いは注意するに越したことはありません。フレームばかりでなく、レンズだってプラスチックレンズはそんなに長い間放置したつもりはなくても、車のフロントガラスの内側においてあったと言うだけで熱によるクラックが入って使い物にならなくなった例をたくさん見てきました。どうにかしてくれ、と言われてもそうなったらレンズを新しいものに替えるか、見づらいのを我慢し続けるか、どちらかしかありません。見づらいのを我慢するのは辛いです、視力にも影響してくることだってあります。
海水浴に行って今はメガネをはずしていたい、なんて時が一番危険なんで、そういう時は車においていってしまうのではなくてケースに入れてクーラーボックスの中に入れといたほうがまだ安全だと覚えていてください。そのまま入れると水滴がついてそこから水ヤケの跡が残るなんてのも心配しなくちゃいけないんで、ぜひともケースに仕舞ってからで。メガネが冷えすぎてレンズが痛んだというのは聞いたことがないんで、まだ問題が少ないはずです。しかし一つだけ!ポリアミド樹脂のフレームを5度以下の状況にしておいてヒエヒエの状態で思いっきり力を入れて曲げると折れるので、それだけは注意してくださいね!!!<クーラーボックスで常時5度以下になると言うと、かなり高性能ですよね