murasehisariの写真屋さん日記

学校アルバムの仕事をメインに街の写真屋さんでお仕事してるmurasehisariの日々是徒然日記です

どうしてもメガネは掛けたくないらしいです(汗)

10年前に一度メガネを作ってくださったお客様で、それは手元用だったんですが最近それだと見えにくいから目が変わったんじゃないかといって相談にいらっしゃった方がいました。ご本人曰く「たまたま近くまで来たから」と言うことなんですが、お話を聞くと実は最近日中まぶしいのが気になるということで、本当はそれが一番の相談だったんですね。
ウチの店でメガネを作ったあとには車を運転するためのメガネを眼科で調べてもらってから作り、今から2年程前にはやはり眼科で見てもらってから遠近両用を東京都内で作ったと言うんですね。だけどその両方とも普段から常用はしていなくて、遠用専用メガネはテレビを見るときと車の運転のときのみ、遠近両用にいたっては作ったお店で説明を受けてから、家に持ち帰って掛けてみたところどうも説明どおりに周りがすっきり綺麗に見えなくて、顔を振るとぐらぐらとゆれるのでメガネを掛けていなくても自分としてはなんら不自由ではないからいいや、と言うことでメガネケースに仕舞ったままだというんですね。で、普段買い物や街に出かけるときは持ち歩くこともしないのでウチの店に来てくださったときも話に出てきた遠用も遠近両用も、もちろん手元用も持っていなかったんです。
なんとももったいない。遠近両用なんて、聞けば有名な店で作ったと言うのに。
いったい、どんな状態の目なんだろうと一応10年前のデータだけれど確認するためにと顧客管理のデータベースを調べてみたら、遠視がベースで両眼とも+2.50Dも乱視の入るとんでもなく疲れやすい目をしていたんですね。
見え方を調べていく前に、見え方や目の疲れ方は最近はどんな感じなのか、また眼科には定期的に行っているのか聞いてみたんですが、眼科は年に数回左目が充血やピクピクするのが治まらないことがあるので診てもらう事があるということと、眼科では視力の出方には変化がないので今までのメガネでいいと言われていると教えてくれました。
だいたい、ここら辺まで聞くとご本人がメガネに対してどんな感じでいるのかってのがわかってきます。まぁ、推察でしかないんだけど、基本的にメガネはかけたくなくて今までウチの店でもお話したし眼科でも説明を聞いていることだと思うんだけど、「遠視で乱視があるからメガネは掛けたほうがいい」というのはわかっているんだけどそこまで深刻な状況じゃないんだってのを確認したいんだと思うんですね。いや、これはあくまでも私の推察なんだけど。
遠視の方の目はどうなっているかと言うと、こんな感じで水晶体を通った光は眼球(ここでは真ん中の前が出っ張っている丸の部分)の一番後ろの網膜(ここでは緑色の線でラインを引いてあるところ)を通り越して網膜の後ろで焦点(赤の実線の部分)を結んでいるんですね。
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水色の点線のところに焦点が結ばれればメガネが要らない状態と言うことになるんだけど、網膜上ではなくて網膜の後ろで焦点結んじゃってるからこの場合メガネをかけないでいる時は水晶体のところでこれの厚みを調整して(自分の調節力を駆使して)網膜上に焦点が来るように「意識をしないで」働きます。これは見えるとか見たいとか見えたいとかって言う「意識してものを見る」時ばかりじゃなくて、普通に街中を歩いていて「見たい」と思ってもいない見ず知らずの人とすれ違うときにも、その人との距離を測ったり男か女かを見分けたりと言うなんてことはないことをしているときにも働きますから、遠視の人がメガネやコンタクトレンズといったこの網膜までの行き過ぎている距離を縮める道具(水色の半円部分)を使わない限り、目を開けている最中はずっと調節し続けます。
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それってどのくらいの疲れ度なのかをどうやって体験できるかって言うと、1日中中腰でいて膝を少しだけ曲げて動いてなさいというのくらいなので、やってみるとよほど忍耐力があったり体力がある人じゃない限り1時間と続けられないと思います。若い人はしばらく大丈夫だと思いますが、40代にもなると厳しいんじゃないかなと思います(実際にやってみたんですが、私は44歳ですが10分で断念しました。結構がんばったんですがね)もっと年齢が上だとさらに厳しいと思いますが、それを目の調節力に置き換えればわかりやすいと思います。
若いうちは調節力が旺盛なんで、無意識に1日中調節力を使ってても大して疲れないしちゃんとものは見えるし、図でわかるようにいったん網膜にものが写ってますから、遠くは良く見える目なんだ、と「錯覚」するんですね。本当はそうじゃない、絞りが高性能な望遠鏡みたいなもんで目いっぱい調節力があるからサッとピントがあわせられるだけなんです。
また、この遠くを見るために調節力を使っちゃうと、もっと近くを見るときにグッと焦点を前に持っていかなくちゃならないとき(たとえば紫の点線のところまで赤い矢印方向に焦点を持ってくる)にこの調節力がもう目いっぱい使ってるんで働きません、と言うことにもなりかねないんですね。
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年齢が20代30代なのに手元がなんだか見えにくいとか、遠くは人より見えるのに近くを見ようとするとどうも焦点が合わないとかって言うときには遠視を疑ってみて調べたほうがいいです。

で、お客様にはじゃあ見え方を調べてみてから、どんな風にしていったらいいかお話していきましょうか、といって調べさせていただいたんですが、残っていた10年前のデータよりもベースの遠視は強くなっているし乱視はそのまま+2.50D必要だし、手元用の度数は今よりも6段階強い度数が必要と言うことがわかったんですね。どんな目なのかを説明しながら、上の図も手書きで書いてお話しましたよ。利き目は左目だったんでそっちの目を普段酷使しているから左ばかり疲れたりするのだろうけど、それをきっちり度数を入れることで1.0まで出せたし右はこっちのほうが乱視が強いんですが、利き目じゃないこともあいまって視力の出が悪くて乱視を入れないとRGの判別も難しいくらいなのが何とか0.6まで出せたし。そこでテストレンズで遠視用メガネを作って試しに歩いてもらったり道路の向こう側を見てもらったりして特に気持ち悪くならないしゆがんでも見えないし目を開けてるのが楽だといったにもかかわらず、「どうしてもメガネをかけなくちゃいけないのかしら?」と仰るんで一旦お家に帰って持っているメガネを持ってきてもらってそれとどう違うのかどれを作り直してどれを使っていけばいいのか、まぶしさをなくすにはどうやっていくのが一番いいかはそれを見させていただいてから考えましょうとお話しました。
本音を言うと、今すぐにでも普段からメガネをかけてもらうほうがいいです。でも本人は掛けたくないというのが一番で、見え方に関してはいったいどんな目をしているのかを本人が納得しないとどう勧めても話は先に進まないでしょう。
遠視の方はほんとにこの状態の方が程度の差があれ、多いです。任せてもらえればちゃんとかけられるメガネ作るのになぁ・・・そうすると目も疲れなくて済むし楽にものが見れるのになぁ、と思うことが結構あるんですよ。