murasehisariの写真屋さん日記

学校アルバムの仕事をメインに街の写真屋さんでお仕事してるmurasehisariの日々是徒然日記です

「メガネ」を説明する

今日は午前と午後2回、ご高齢の方にメガネの話をする機会がありました。午前中にいらした方は移動販売のメガネ屋さんがつい1ヶ月くらい前に来て、メガネを作りませんかというのでお願いしたところ、今日私が話を聞いた限りでは畑仕事のときに使いたいから色の入っている「外歩き用」のメガネを希望していたのに出来上がってきたのは色の入っている焦点距離35センチくらいの「老眼鏡」だったというものでした。このメガネをかけて顔を上げると離れているところが何にも見えない、というクレームをお持ちで、そのことを移動販売のメガネ屋さんに連絡するよりも街のメガネ屋に話を聞いてほしいと思ったそうです。
実際この話をこうやって整理できるまで聞きだすのは難しい作業でした。なにしろ「メガネ」であるからには何を見たってちゃんと見えるものだ、という考えをもってらっしゃったので、持参されたメガネが「手元専用の老眼鏡」だということを理解してもらうまでに時間がかかったのです。その上で今度は本当にほしいと希望されているメガネを設定してその違いを実感していただく、ということをして、それが理解していただけたら2つのメガネを本当にいるのかいらないのか、使い分けをしてもらえるのかどうかを確認しなくちゃならないというのが待っています。
なぜこの「使い分けをしてでも2つのメガネを使いたいのか」を確認する必要があるのかですが、それをしないと「メガネだから何でも見える」という理解のところにまた戻ってしまって今度は外歩き用のメガネで手元が見えないというクレームを生む恐れがあるからです。年齢で判断してはいけないとは思いますが、ご高齢の方で今までメガネを使っていないもしくはこの方のようにメガネなら何でも見えるんだと思ってらっしゃるような場合には、目的距離によってはメガネの必要度数が違うということをすんなり理解していただけないことが多々あるからです。
使い分けの説明をするために視力の確認をしたところ、左右差があるばかりか右の視界が角度によって大幅に欠損することがわかりました。視力表の半分以上が見えなくなるというので考えられるのは眼瞼下垂から網膜への何らかの影響までさまざまです。そうなるとメガネを作ってお仕舞いというわけには行かないのでその見え方の話もして眼科に行ってもらうことにしました。
午後からの方は眼科の処方箋を持っていらっしゃったのですが、調べてもらっているときに細かい説明を聞いていなかったとのことで書かれた処方箋でいったいどんなメガネができるのか説明してほしいといわれました。眼科でいままでよりもかなり強い度数になったという話を聞いたそうですが、メガネとして最高に強い度数なのかどうか心配だとおっしゃるのです。
処方箋に書かれていたのは決して弱いとはいえない遠視にやはり弱いとはいえない遠視系の乱視で、遠近両用をという指示とともに加入度数が書かれていました。ベースの度数は遠視としては強めでしたが加入度数は年齢平均で、それがその方の視力を得るのに必要な最良の度数であるので強すぎるということはないことはお話しました。ただし世間一般的にみると、同年代の方で視力を1.2出すのにメガネの必要のない方の手元を見るとき用のメガネよりも強いことは確かです。しかし視力を得るのに必要な度数と世間一般のもの(たとえば銀行などで貸し出し用においてあるメガネなど)を比較して強いか弱いかを判断するのは間違っているんです。人の顔かたちや身長体重の違いがあるように、眼の中の形にも違いがあります。その形やパーツひとつひとつの能力の組み合わせで近視だったり遠視だったり乱視だったりするので、その「必要な度数」をきちんと出して視力を得ることをしっかり行ったうえで、手元を見るために必要な加入度数が世間一般的ならなんら心配することもないのです。
メガネの度数としては今まで16年使っていた(同じメガネを16年も使っていらっしゃったのです!)ものよりも3倍の度数が必要で、遠視だ乱視だというよりも度数の変化のほうがこちらは気になりました。慣れというのはよく見えるという感覚よりも勝るときがあります。遠視が3倍になった所為で今までよりも近い場所に焦点が合うようになったというのは道理なんですが、そう変化したメガネが使えるかどうか、が一番大事なんです。
トライアルレンズを入れて歩いたり文字を見たりいろいろしてみてもらいましたが、こちらのほうは私が心配するほどの違和感はなかったようです。それよりも「なぜ3倍もの度数が必要になったのか」と「それで問題はないのか」を聞かれて、遠視の変化を図解説明してご理解いただくことになりました。眼科ではそんな話はなかったと仰られましたが、普通はそんな細かいことは説明しないんです。まぁ、だからこっちで聞こうと思ったのかもしれませんが。
ただ見えるというだけでなく、メガネはどんな役割を持ってどんな風に使っていただくために作るのか、そこを理解していただくのはとても必要なことですがとても難しいことだと思います。専門用語になってくると聞いてもわからないといわれます。でもそこでのメガネ屋の仕事って、本当は単純なことだと思います。見たい距離をちゃんと見えるようにメガネを作るということだと思いますんで。