murasehisariの写真屋さん日記

学校アルバムの仕事をメインに街の写真屋さんでお仕事してるmurasehisariの日々是徒然日記です

レンズにクラック(ひび割れ)が入るのは?

先日のガラスレンズの方がクリアだと仰ったお客様が、なんでプラスチックレンズだとすぐに曇った感じになるのかなぁ、と言っていたのが気になっています。いろいろと考えられるんですが、プラスチックレンズの場合通常の基材の上に表面硬度を上げるためのハードコート・反射防止コート・耐衝撃性コート・耐熱性コート・撥水コート・汚れ防止コート・赤外線減光処理、また基材自身に練り込みで紫外線カットが施されていたりするので、その一つ一つが全くの無色ではない(一見して無色であっても、何らかの反射等による色合いがあると考える)とすると重なれば重なるほどクリアではなくなっていくことになると思うんです。それをどんどん技術を上げてきているおかげでガラスのクリアさに限りなく近づいてきていると言うところなんでしょうが、でもやっぱり「クリア」であることはガラスにはまだまだ、というところなんでしょう。HOYAのヴィーナスガードコートのパンフレットにこのコーティングが開発された先には「いつかはガラスを・・・」とあるんですが、いつかはプラスチックレンズがキズに強い(硬度がある)と言う点で追い越す日がくるのかなぁと思わせる内容です。
ところで、プラスチックレンズは熱に弱いと言うのはメガネをお買上いただくと必ず説明することなんですが、例えば約55度以上に加熱されると基材とハードコートが膨張し始めます。(ただこれはその基材がなんであるかによって差があります)この基材とハードコートはなぜ膨張するのか、それはこれらが「有機質」だからなんですね。下はセイコーのガイドブックを参考にこの状態を絵にしてみました。

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一番上にかかっている反射防止コートはガラスと同じ「無機質」ですから、これは膨張しないで現状を維持しようとします。そうすると下の基材とハードコートが膨張するのについていけずに、ひび割れてしまうと言うことです。
ガラスレンズがなぜひび割れがほとんど起こらないのかは、レンズの基材とその上のコーティングが「無機質」であるので、膨張すると言うことがないからだ、とも言えるわけです。また、ガラスレンズは熱伝導率がプラスチックレンズよりも低く、熱を通しにくいと言うのも一つの要因であると考えられます。
この「有機質」と「無機質」であることの違いから起こるクラックという現象を、コーティングも有機質にして熱によって伸縮し、コートにひび割れが起きないようにしようと考えられたのがセイコーのオーガテックと言うコーティングなんですが、これは85度の熱にも耐えるということで、テスト用のレンズを貰って実際にヒーターで実験してみましたがこれが本当にクラックがおきないんですね。全然しわ一つ入りませんでした。ただ、ガラスレンズもオーガテックコートのかかってるレンズも、ヴィーナスガードコートのレンズも、擦り傷にはある程度までしかないように思います。ヴィーナスガードコートはまだ2本分しか売ってないのでなんともいえませんが、私が実際に販売した限りでは、オーガテックコートは擦り傷に対してはSFTコートよりも弱いかなと言う印象です。
ちなみにセイコーのコーティングは表面ツルツルコートが「ラクケア」その上が「ハイパーアメニティ」、HOYAでは表面ツルツルコートが「ビュープロテクト」その上が「SFT」でその上が「ヴィーナスガードコート」、ニコンでは表面ツルツルコートが「ECC」その上が「SEE」です。セイコーの「オーガテック」は他のメーカーでは出ていない「有機質コーティング」なんですね。実際の取り扱いさえ守っていただければ、表面ツルツルコート程度の撥水と埃が落ちやすいコーティングで十分だと思うんですが、熱のこもる暑い場所でお仕事しているというのならオーガテック、埃が舞っていて傷になりやすい場所だと言うのならSFTやハイパーアメニティ、もっと確実に行きたいのならSEEコートやヴィーナスガードコートを選ぶといいんじゃないでしょうか。
私は、まずお勧めするのは表面ツルツルコートがかかっているレンズです。これで十分だと思うんですけどね。


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