murasehisariの写真屋さん日記

学校アルバムの仕事をメインに街の写真屋さんでお仕事してるmurasehisariの日々是徒然日記です

初めての遠近両用

今日はなんだか忙しい日でした。ほとんどのご相談が遠近両用の件で、作り直しがあったりフィッティングがあったりしましたが、その中でも今まで遠近両用をかけたことがなかった方のご相談がなかなか勉強になりましたね。
50歳代初めの女性の方で、今までは車の運転のときだけメガネをかけているということでお調べしたら両眼ともS−1.00D程度の軽度の近視、裸眼で0.5は確実に確認できるので『生活視力』としてはちょっと弱いかもしれないけど室内で過ごすことが多いのなら問題ないと思うんです。でもご相談は「仕事のときに小さな字が見づらいのを何とかしたい」というもので、いったいどのくらいの字が見づらいのかとお聞きしたら音楽CDの裏パッケージの文字(特に価格)と仰るんですね、近距離視力表でいうと0.7とか0.8、新聞で言うと株式欄の数字が見づらいという感じなんですが、そうなってくると作るメガネの選択肢は3つ、手元専用か中近メガネか遠近両用メガネ、で手元用をその仕事のときにいちいち掛けはずしをするのは面倒というのと、立ってする仕事なので顔を動かしたときに周りがゆがんだりぼやけたりするのは困る、とのことで手元専用メガネの選択肢は消えた。
パソコンはしょっちゅう使わないし、車の運転には不向きというところで中近メガネもイマイチということになったので最後に残った遠近両用レンズをいろいろと試していただいてどんな感じなのか聞いていったわけだけれど、これがね、なかなか勉強になったんです。
普段からメガネを掛けなれていない訳なのでまず目線の使い方が「メガネを掛け慣れている人」とは違い、ものを見るときに顔ごと動くんですね、なので遠近両用のレンズがはいっていても下を見ようとするときに顔ごと下に向くんで、結局目の位置とレンズの位置が平行のまま、遠くを見るときのままで手元を見ようとするから焦点が合わない。レンズの下の部分を使って手元を見ないとそのための度数が入っているところを使っていることにならないので、いつまで経っても焦点は合わないんですね。この部分は実は本当に難しい部分で、いくら説明しても、近距離視力表や新聞とかを使って顔を動かさないでこの文章の部分を追いかけてくださいね、といって顔の前で視線を動かすということをしてもらうんだけれど、いくら頭でわかっていても意識というか、目線が動かない人はいます。これは遠近両用レンズを長年使っている方の中にも結構いらっしゃって、遠近は持っているけれどちゃんと見えたことがない、と仰る方にこの使い方を説明すると「こんなふうに使うものなの?」と驚かれることがあります。いやー、そういう時はこっちが驚きますけどネェ。
このお客様には一番最初に「セイコーP−1ウイング156DMC2」の累進帯16ミリから始めてもらって、このときはまだ目線の動かし方はよくわかってなかったんですね。で、同じ設計で累進帯14ミリにするとちょっと横がゆれているというのをわかっていただけて、でも手元は見やすくなった、と仰います。これは累進帯が短くなったので目線の上げ下げがたくさんいらなくなったというのが一つ理由として考えられると思います。で、次には「HOYAサミットプロ」これは累進帯14ミリで、手元の焦点の合いやすさと遠くのピントの合う速さが他よりも早い、というのが特徴としてあるんですが、それがいまひとつよくわからない、とのお話で、前の二つとそれほど違いがない、と仰るんですね。そうか、と思って次に「セイコーP−1シナジー」を使っていただくとこれもあまり大きな違いがないというんですね。
設計自体はどんどん新しいものに変えてるはずなんだがなぁ、と思いつつ「HOYAFD」を使っていただくと、手元の見える範囲の広さは今までよりも一番あるとわかるけれど、目線の上げ下げをしないと見たいものにピントが合わないということはどれも変わりがない、と、ここで初めて「何が変わりがない」といっている部分なのかがわかったんですね。
遠近両用レンズというのは縦の関係で度数が変わっているんです。レンズの上のほうに遠くを見るための度数があってだいたい上半分の全体を占めています。下に行くほど徐々に加入度数といってプラス方向の度数が入っていって、遠くを見るための度数の場所からレンズの設計にもよりますが2センチほど下がったところに手元を見るための場所があってそこがレンズの下半分のうちの3分の1程度の範囲になります。手元の部分は遠くよりも狭いんですね。どんなにいい設計のレンズでもこの上下関係は変わりませんから、初めて遠近両用をかける方にしてみると「目線の上げ下げで見え方が違う」と「立って歩くと揺れる」というのは変わりがないんですね。ただ、さすがにP−1シナジーやFDになると立って動いても怖さが少ないということでしたが、でも揺れるのは変わらないから慣れるのが必要というのはどれも同じ、ということでした。
結局仕事のときにしか使わないだろうからと、今回は価格を抑えてP−1ウイング156DMC2の14ミリを使うことになって、使い慣れて見え方に欲が出てきたらそのときはまたいろいろ試して見ましょう、という話になりました。
使い慣れると遠近両用レンズは外せなくなるという方のお話を、今までたくさん聞いてきました。遠くも近くも、掛けはずしをしなくても見えるし便利だし、というお話はでも今までメガネを常用してきたからすんなり移行できたということなんだと思います。今までメガネがない状態で問題なく過ごしてきた方に、メガネ自体をずっと掛けていてくれというのはいきなりは無理だと思いますし、そのために慣れる時間と言うのも必要になってきます。ウチで遠近両用を作っていただいたお客様にはぜひとも使いこなしていただいて、便利に使ってますといっていただけるようにサポートして行きたいと思います。